自己破産・個人債務者再生
・任意整理

債務整理を迷われている方へ

自己破産や民事再生など、債務整理を迷われている方は、できるだけ早期にご相談頂くことをおすすめします。通常、財産は常に上下変動しますが、自己破産の場合、破産手続開始決定時の財産が裁判所に没収され、民事再生の場合、再生手続開始決定時の財産が最低弁済額の基準となるため、早期に手続開始決定が出れば、その後に得た財産は自分のものにすることができます。多くの場合、働いて給与を得ることで財産が増えるため、できるだけ早く手続開始決定を受けた方が、後々確保できる財産は増えると言うことができるかと思います。

借金の清算は早い方がメリットがあります

自己破産や個人債務者再生(個人再生)など、借金の清算方法について迷われている方は、できるだけ早期にご相談いただくことをおすすめします。 各個人の財産は常に上下変動していますが、自己破産の場合は破産手続開始決定時の財産が責任財産として裁判所に没収され、個人再生の場合は、再生手続開始決定時の財産が最低弁済額の基準となります。 その為、早期に手続開始決定が出れば、基準となる時点よりも後に得た財産を自由財産として確保することができるからです。 多くの場合、働いて給与を得ることで財産が増えるため、できるだけ早く手続開始決定を受けた方が、後々確保できる財産が増えることになります。

借金の清算方法の選択

債務の総額や所得、借金の原因・事情等により、自己破産をするのか、個人債務者再生か、また任意整理が可能なのかと、執るべき手続きが変わります。 ご自分のケースはどの方法をとることが適切なのか、早めにご相談ください。 任意整理は、裁判所を通さずに弁護士が代理人として金融機関と分割払いの交渉をする清算方法です。 裁判所を通す「法的整理」と対比して、裁判所を通さない清算手続であることから「任意整理」と呼ばれています。 任意整理手続では、金融機関は借入金の元金と和解成立日までの利息・損害金の全額を、概ね5年間の長期分割払い(60回払い)にしてくれます。 逆に言いますと、元利金を5年(60回払い)で支払えない程の借金があると、任意整理では清算することができないことになります。 目安としては、給与所得者が生活をしながら働いて返済していける金額は通常は月々5万円程度が普通ですから、5万円を60回払いで返済するというのが任意整理の限界となります。 それ故、5万円を60回払いで返済するという任意整理の通常の考え方では、任意整理を執ることができる借金の総額は300万円程度(5万円×60回)ということになります。 勿論、返済可能金額は、各人の収入や返済可能月額によりますから、300万円というのはあくまで一般的平均的な目安です。 では、目安として300万円を超える借金がある方はどのようにして借金を返済すればよいのかという疑問に対する回答のひとつが、個人債務者再生手続です。 個人債務者再生手続は、借入金の5分の1(但し、最低100万円)を3年ないし5年で返済していく手続です。 元利金を5分の1に圧縮することができるので、元利金を減額して貰えない任意整理手続きでは返済が不可能な方でも返済をして借金を清算することができます。 元利金を5分の1に圧縮しても、それでも返済することができない場合には、自己破産手続きを執ることになります。

自己破産

債務整理の方法には、「自己破産」「民事再生」などの法的な手続きのほか、「任意整理」という裁判所を通さない手続きもあります。

自己破産

自己破産とは

自己破産とは、端的に言うと、全ての自分の財産を投げ出す代わりに、借金を棒引きにしてくださいという手続きです。 原則として全ての財産を投げ出す必要がありますが、自由財産拡張制度により、99万円を超えない範囲の財産を再起の為に確保することが認められています。 また、一定の生活に必要な財産は確保することが可能で、衣類、電化製品、家具などの生活に不可欠な財産も10万円以上の価値のある物以外は原則として処分されません。

手続き期間

破産管財人が就任するかどうかによっても異なりますが、破産管財人が付かない場合で通常3~4ヶ月程度、破産管財人が付く場合で通常半年程度で破産手続きは終了します。 また、実質的には、弁護士に自己破産を依頼した時点で、担当弁護士から債権者に受任通知書を出すことによって、債権者からの督促や取り立ては事実上止まります。その段階で、生活の平穏を確保することができます。

  • メリット

    • 受任通知書を出すことによって債権者からの督促や取り立てが止まる。
    • 手続きが終了すれば借入金等の負債の支払い義務が法律上免除される。
    • 破産手続開始決定後に得た収入は、自由財産と言って全て自分のために使うことができる。
    • 破産管財人が就任し、自由財産拡張制度を利用することができれば、99万円までの財産を確保することができる。
  • デメリット

    • 99万円を超えない範囲の財産は換価処分されて債権者への配当等にまわされる
    • 自己破産の手続き期間中は、弁護士、税理士、宅地建物取引士、生命保険募集人、警備員など、特定の資格を必要とする職業に就くことが制限される(資格制限)
    • 新たに借金をしたり、ローンを利用することが制限される

破産前の財産の処分

破産前に財産を処分する際は注意が必要です。 破産する場合、財産の処分は、破産時の2年前までさかのぼってチェックされます。 不適切な処分があったら「元に戻せ」と言われることもあります。 例えば、息子に不動産を譲渡したりすると、裁判所や破産管財人から元に「戻せ」と言われることもあります。 また、不適切な処分をしたら、2年間は破産できないということにもなります。

裁量免責

自己破産の手続きには「免責手続」というものがあり、これを経て裁判所から免責許可決定を受ければ、借金の支払い義務が免責されます。 ただし、どのような場合でも免責許可決定が受けられるわけではなく、免責不許可事由がある場合には免責されないこともあります。 免責不許可事由としてよく挙げられるのが「ギャンブル・浪費などが原因でできた借金」です。 相談者の多くも「競馬やパチコンなどのギャンブルが原因の借金は免責されない」「ブランド物を買い漁るなどの浪費が原因の借金は免責されない」とお考えですが、必ずしもそうとは限りません。 ギャンブルや浪費などの免責不許可事由があっても、裁量免責により免責許可決定を受けることは可能です。 裁量免責とは、免責不許可事由に該当する行為があった場合でも、全体的な事情を鑑みて、裁判所が免責しても良いと判断した場合には、裁量により免責が認められるという制度です。 所得を偽る、財産を隠す、特定の債権者にだけ借金を返済するなど債権者の平等に反したり、裁判所・言破産管財人を欺く行為をすると、免責許可決定が受けられません。 破産法が定めるルールに反したり、裁判官の信頼を損ねたりしなければ、ギャンブルや浪費などの免責不許可事由があったとしても、実務上、免責許可決定を受けることは可能です。 尚、民事再生手続であれば免責不許可事由を問われませんので、免責許可決定が受けられるかどうか不安な場合、一定の収入のある方については、個人債務者再生手続(個人再生)をおすすめします。

自己破産の免責が受けられない場合

  • ◆財産隠し
    責任免除が下りないのは、財産隠しをしている人です。 「不動産を隠していた」「申立代理人や管財人に内緒で家賃収入の入る不動産を一部息子の名義にして隠していたが、税金の納付書が管財人に還付されて発覚した」 こうしたケースでは責任免除は下りませんでした。
  • ◆債権者の平等に反する行為
    債権者の一覧表から、一部の債権者を除くとか、一部の債権者にだけ弁済するとかといった、債権者の平等に反する行為も認められません。
  • ◆所得隠し
    2箇所から所得があったのに、1箇所だけ申告するなどして所得を偽る行為も認められません。
  • ◆その他
    税金、犯罪行為でできた賠償金や、子どもの養育費など、免責の対象とならないものもあります。 個々のケースについては、弁護士に相談なさることをおすすめします。

裁判所に没収されない財産

◆自由財産
「自己破産すると財産はすべて没収される」と思われている方もおられるかもしれませんが、そうではありません。 自己破産の手続きにおいて、裁判所に没収されない財産のことを「自由財産」と言い、次の3つに分類されます。
1.自己破産後の開始決定後に取得した財産(新得財産)
2.破産手続開始決定時の一定の財産のうち、99万円を超えない財産(自由財産拡張制度の対象財産)
3.生活に不可欠な家具・電化製品(本来的自由財産) さらに車や生命保険などの財産も、破産管財人に相当額(車両時価相当額、保険解約返戻金相当額)を拠出して買い取ることで維持できます。 破産管財人の目的は、車や保険等の財産を債務者から取り上げることではなく、換金して配当することにあります。破産管財人からの買取価格は、現時点における清算価格です。 車であれば購入価格ではなく、現時点における処分価格です。 生命保険であれば、事故発生時の保険金ではなく、例えば1億円の生命保険であっても、保険金の1億円ではなく、保険解約返戻金が100万円である場合には100万円が買い取り価格ということになります。

◆自由財産拡張制度
自由財産以外の財産は原則として裁判所に没収されることになります。 ただし、財産の種類によっては生活に支障をきたす場合があり、このような場合には「自由財産の拡張」が認められることもあります。 こうして本来は自由財産ではない財産を、自由財産として認める制度を「自由財産拡張制度」といいます。

自由財産拡張制度の運用基準

1. 拡張の判断の基準
<拡張の判断にあたっては、まず①拡張を求める各財産について後記2の拡張適格財産性の審査を経た上で、②拡張適格財産について後記3の99万円枠の審査を行うという順序になります。 なお、99万円を超える現金は、後記2の審査の対象とはならず、後記3の99万円枠の審査の対象となります。

2. 拡張適格財産性の審査
(1)定型的な拡張適格財産 以下の財産は、拡張適格財産とされています。
①預貯金・積立金(なお、預貯金のうち普通預金は、現金に準じる)
②保険解約返戻金
③自動車
④敷金・保証金返還請求権
⑤退職金債権
⑥電話加入権
⑦申し立て時において、回収済み、確定判決取得済み又は返還額及び時期について合意済みの過払金返還請求権
(2)上記(1)以外の財産
原則として拡張適格財産とならない。
ただし、破産者の生活状況や今後の収入見込み、拡張を求める財産の種類、金額その他の個別的な事情に照らして、当該財産が破産者の経済的再生に必要かつ相当であるという事情が認められる場合には、拡張適格財産とする(相当性の要件)。
(3)手続開始時に財産目録に記載のない財産
原則として拡張適格財産となりません。ただし、破産者が当該財産を財産目録に記載していなかったことにつきやむを得ない事情があると認められる場合については、その財産の種類に応じて(1)又は(2)の要件に従って拡張適格財産性を判断されます。

3. 99万円枠の審査
(1)拡張適格財産の価額の評価
原則として、時価で評価する。
ただし、敷金・保証金返還請求権(前記2(1)④)は契約書上の金額から滞納賃料及び明渡費用等(原則として60万円)を控除した額で評価し、退職金債権(同⑤)は原則として支給見込額の8分の1で評価し、電話加入権(同⑥)は0円として評価します。
(2)現金及び拡張適格財産の合計額が99万円以下の場合
原則として自由財産拡張相当とされています。
なお、後記(3)の場合に99万円超過部分に相当する現金を破産財団に組み入れることにより、財産の評価額を組み入れ額分低減させ、実質的に拡張を求める財産の額を99万円以下とすることが可能です。
(3)現金及び拡張適格財産の合計額99万円を超える場合
原則として、99万円超過部分については自由財産拡張不相当とされています。
ただし、破産者の生活状況や今後の収入見込み、拡張を求める財産の種類、金額その他の個別的な事情に照らして、拡張申立てされた99万円超過部分の財産が破産者の経済的再生に必要不可欠であるという特段の事情が認められる場合には、例外的に自由財産拡張相当されることもあります。

民事再生

民事再生とは、裁判所に借金の返済が困難であることを認めてもらい、住宅ローンを除いて、1/5に減額された借金(最低返済額100万円)を、原則3~5年間で分割返済する手続きです。減額後の借金を完済すれば、住宅ローン以外の借金に対する支払い義務は免責されます、民事再生のうち、個人のみを対象とした手続きを「個人民事再生」といいます。
民事再生では、自己破産のように借金が全額免責されるわけではありませんが、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度により、自宅を残すことが可能となります。また、弁護士、税理士、宅地建物取引士、生命保険募集人、警備員など、特定の資格を必要とする職業に就くことへの制限(資格制限)もありません。さらに免責不許可事由が問われないので、ギャンブルや浪費などが原因でできた借金であっても利用することができます。

個人債務者再生(個人再生)

個人債務者再生手続きとは、裁判所に借金の返済が困難であることを認めてもらい、1/5に減額された借金(最低返済額100万円)を、原則3~5年間で分割返済する手続きです。 減額後の借金を完済すれば、住宅ローン以外の借金に対する支払い義務は免責されます。 個人再生では、自己破産のように借金が全額免責されるわけではありませんが、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度により、自宅を残すことが可能となります。 また、弁護士、税理士、宅地建物取引士、生命保険募集人、警備員など、特定の資格を必要とする職業に就くことへの制限(資格制限)もありません。 さらに免責不許可事由が問われないので、ギャンブルや浪費などが原因でできた借金であっても問題にしない取り扱いとなっています。 このように、破産を避けて民事再生するメリットはたくさんあります。 原則3~5年間という意味は、借入金の1/5の金額を3年で分割で支払えると言えば、3年で返済計画案を立案することになりますが、3年では支払えません。5年だったら支払えますと言うと、裁判所は基本的に5年の分割返済にしてくれます。

手続きの期間

通常、免責許可決定までに半年程度かかり、そこから原則3~5年かけて借金の5分の1(最低100万円)を分割返済していくことになります。 弁護士に個人再生を依頼すれば、その時点から債権者からの督促や取り立ては一旦止まります。

  • メリット

    • 受任通知書を出すことによって債権者からの督促や取り立てが止まる。
    • 住宅ローン以外の借金が原則1/5に減額される(最低返済額100万円)
    • 借金の分割返済が可能となる(原則3~5年間)
    • 住宅ローン特則を使うことにより自宅を保有し続けることができる。
    • 弁護士、税理士、宅地建物取引士、生命保険募集人、警備員など、特定の資格を必要とする職業に就くことへの制限(資格制限)がない
    • 免責不許可事由が問われないので、ギャンブルや浪費などが原因でできた借金であっても特段問題にされない。
  • デメリット

    • 借金が大幅に減額されるが、1/5の借金は返済しなくてはならない。
    • 新たに借金をしたり、ローンを利用したりすることが制限される。

「個人債務者再生手続き」(個人再生)のご相談はお早目に
個人再生をお考えの方は、できるだけ早期にご相談されることをおすすめします。 個人再生は借金の支払い義務の全額が免責されるわけではなく、債権の1/5は分割返済していかなければいけないため、余力があるうちでないと履行可能性が低くなる手続きであると言えます。 また、住宅ローンの支払いが半年や1年程度滞っていると、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)が利用できなくなる場合もあります。 「住宅ローンのリスケジュール」という方法もありますが、すべての債権者がそれを適用してくれるとは限りませんので、個人再生をお考えの方は自己破産よりもさらに早く弁護士にご相談いただく必要があると言えます。

任意整理

任意整理

任意整理

任意整理とは、裁判所を通さずに、弁護士などが債権者と直接交渉・和解する手続きです。 和解内容に従って、借金を返済していくことになります。借金の総額や毎月の返済額などを、生活に支障のない範囲に減額したり、一部の借金だけを選択的に整理したりすることなどが可能となります。

手続きの期間

案によって手続き期間は異なりますが、弁護士に任意整理を依頼すれば、その時点から債権者からの督促や取り立ては止まります。

  • メリット

    • 受任通知書を出すことによって債権者からの督促や取り立てが止まる。
    • 裁判所を通さない為、裁判所に提出する書類の作成や、裁判所への出頭などの負担がない。
    • 保証人が付いている借金は任意整理せずにこれまで通り支払い続けるなど、柔軟な債務整理が可能
    • 弁護士、税理士、宅地建物取引士、生命保険募集人、警備員など、特定の資格を必要とする職業に就くことへの制限(資格制限)がない。
  • デメリット

    • 借金の全額または一部が免除される自己破産・民事再生と異なり、原則として借金の元本全額を支払う手続きであるため、一般的に、これらの手続きと比べると返済額が多くなる
    • 新たに借金をしたり、ローンを利用したりすることが制限される。

家計簿について

自己破産や民事再生の手続きを行う際には、裁判所に申立てをする直近2ヶ月分の家計簿を提出します。この家計簿には債務者だけでなく、同居しているすべての人も含めた「世帯の家計」を記載しなければいけません。家計簿の提出を受けることで、裁判官が債務者を含めた世帯の生活状況などを把握することができるほか、次のような意味があると考えられています。

家計簿をつける意味

  • 最低限の生活費の確保

    自己破産の手続きにおいて、基本的に破産手続開始時の財産は裁判所に没収されますが、すべての財産を没収されると生活が成り立たなくなってしまうため、家計簿を提出して最低限必要な生活費の金額を説明することで、生活費相当額を確保することが認められます。

  • 贅沢な生活を送っていないことの証明

    裁判所に家計簿を提出することで、直近2ヶ月間はギャンブル等の浪費行為を行っておらず、また決して贅沢な暮らしをしていないことを疎明します。

  • 支払い不能の要件の説明

    裁判所に家計簿を提出することで、収入から生活費を除いた月々の余剰金額では継続的に借金を返済すことができないという、支払い不能の要件を疎明することができます。

  • ご自身の生活の見直し

    継続的に家計簿をつけることで、家計のどこに無駄があったり、問題があったりするのかがわかるようになり、ご自身の生活の立て直しに役立ちます。

勘定科目の振り分けは当事務所で行います

裁判所には、月別の家計簿を提出する決まりになっています。 ただ、大まかな家計簿では裁判所に信頼してもらえないことがあるため、勘定科目の振り分けなど、できるだけ細かく家計簿をつける必要があります。 しかし、経理や総務等のお仕事をされていた方以外は、勘定科目を適切に振り分けるのは難しいので、当事務所では、依頼者の方に毎日、購入した食品や嗜好品など毎日の家計簿をご記入いただいた後、当事務所で適切な勘定科目に振り分けるようにしています。 勘定科目の振り分け以外にも、何かわからないことがあればご自身で判断するのではなく、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

不安な方は弁護士にご相談ください

自己破産ではすべての借金に対する支払い義務が免責されますが、あくまでこれは原則で、例外もあります。例えば、不法行為にもとづく賠償金、離婚による養育費、国への税金などは免除の対象とはなりません。このように全額免責とならない例外もありますので、ご自身が例外に該当しないかどうか不安な場合には、弁護士に相談されることをおすすめします。

民事再生のご相談はお早目に

民事再生をお考えの方は、できるだけ早期にご相談されることをおすすめします。民事再生はすべての借金に対する支払い義務が免責されるわけではなく、債権の1/5は分割返済していかなければいけないため、余力があるうちでないとできない手続きであると言えます。また、住宅ローンの支払いが半年や1年程度滞っていると、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)が利用できなくなる場合もあります。「住宅ローンのリスケジュール」という方法もありますが、すべての債権者がそれを適用してくれるとは限りませんので、民事再生をお考えの方は自己破産よりも早く弁護士にご相談頂く必要があると言えます。

自己破産の免責不許可事由

自己破産の手続きには「免責手続」というものがあり、これを経て裁判所から免責許可決定を受ければ、借金の支払い義務が免責されます。ただし、どのような場合でも免責許可決定が受けられるわけではなく、免責不許可事由がある場合には免責されないこともあります。
免責不許可事由としてよく挙げられるのが「ギャンブル・浪費などが原因でできた借金」で、ご依頼者様の多くも「競馬やパチコンなどのギャンブルが原因の借金は免責されない」「ブランド物を買い漁るなどの浪費が原因の借金は免責されない」とお考えになられていますが、必ずしもそうとは限りません。ギャンブルや浪費などの免責不許可事由があっても、裁量免責により免責許可決定を受けることは可能です。裁量免責とは、免責不許可事由に該当する行為があった場合でも、全体的な事情を鑑みて、裁判所が免責しても良いと判断した場合には、裁量により免責が認められるという制度です。ただし、所得を偽ったり、財産を隠したり、特定の債権者にだけ借金を返済するなど債権者の平等に反したりすると、免責許可決定が受けられないことがあります。しかし、破産法が定めるルールに反したり、裁判官の信頼を損ねたりしなければ、ギャンブルや浪費などの免責不許可事由があっても免責許可決定を受けることは可能となります。
なお、免責許可決定が受けられるかどうか不安な方につきましては、民事再生であれば免責不許可事由を問われないため、一定の所得がある場合などにはそちらの手続きをおすすめすることもあります。

自己破産の財産没収

「自己破産すると財産はすべて没収される」と思われている方もおられるかもしれませんが、そうではありません。自己破産の手続きの中で換価しなければいけない財産は、現在価格が20万円以上の財産(現金の場合は、99万円を超える金額)に限られており、また、現在価格20万円以上の財産であっても、生活に必要な財産は維持することが可能で、家具などの生活に不可欠な財産も原則処分されません。さらに自動車や生命保険などの財産も、破産管財人から買い取ることで維持できる場合があります。破産管財人の目的は、それらの財産を債務者から取り上げることではなく、換金して配当することです。そのため、市場価格ではなく清算価格で買い取れる場合もあります。例えば、1億円の生命保険であっても、保険解約返戻金が100万円である場合には、100万円で買い取ることもできるというわけです。

自由財産拡張制度

自己破産の手続きにおいて、裁判所に没収されない財産のことを「自由財産」と言い、次の3つに分類されます。

  • 自己破産後の開始決定後に取得した財産
  • 現在価格が20万円以下の財産(現金の場合は、99万円以下の金額)
  • 生活や仕事などに不可欠な家具・道具

これら以外の財産は原則として自由財産とは認められず、裁判所に没収されることになります。ただし、財産の種類によっては生活に支障きたす場合があり、このような場合には「自由財産の拡張」が認められることもあります。こうして本来は自由財産ではない財産を、自由財産として認める制度を「自由財産拡張制度」といいます。

自由財産拡張制度の運用基準

1. 拡張の判断の基準 

拡張の判断にあたっては、まず①拡張を求める各財産について後記2の拡張適格財産性の審査を経た上で、②拡張適格財産について後記3の99万円枠の審査を行う。なお、99万円を超える現金は、後記2の審査の対象とはならず、後記3の99万円枠の審査の対象となる。

2. 拡張適格財産性の審査

(1)定型的な拡張適格財産・・・以下の財産は、拡張適格財産とする。

  • 預貯金・積立金(なお、預貯金のうち普通預金は、現金に準じる)
  • 保険解約返戻金
  • 自動車
  • 敷金・保証金返還請求権
  • 退職金債権
  • 電話加入権
  • 申し立て時において、回収済み、確定判決取得済み又は返還額及び時期について合意済みの過払金返還請求権

(2) (1)以外の財産・・・原則として拡張適格財産とならない。

ただし、破産者の生活状況や今後の収入見込み、拡張を求める財産の種類、金額その他の個別的な事情に照らして、当該財産が破産者の経済的再生に必要かつ相当であるという事情が認められる場合には、拡張適格財産とする(相当性の要件)。

(3)手続開始時に財産目録に記載のない財産・・・原則として拡張適格財産とならない。

ただし、破産者が当該財産を財産目録に記載していなかったことにつきやむを得ない事情があると認められる場合については、その財産の種類に応じて(1)又は(2)の要件に従って拡張適格財産性を判断する。

3. 99万円枠の審査

(1)拡張適格財産の価額の評価・・・原則として、時価で評価する。

ただし、敷金・保証金返還請求権(前記2(1)④)は契約書上の金額から滞納賃料及び明渡費用等(原則として60万円)を控除した額で評価し、退職金債権(同⑤)は原則として支給見込額の8分の1で評価し、電話加入権(同⑥)は0円として評価する。

(2)現金及び拡張適格財産の合計額が99万円以下の場合・・・原則として自由財産拡張相当とする。

なお、後記(3)の場合に99万円超過部分に相当する現金を破産財団に組み入れることにより、財産の評価額を組み入れ額分低減させ、実質的に拡張を求める財産の額を99万円以下とすることが可能である。

(3)現金及び拡張適格財産の合計額99万円を超える場合・・・原則として、99万円超過部分について自由財産拡張不相当とする。

ただし、破産者の生活状況や今後の収入見込み、拡張を求める財産の種類、金額その他の個別的な事情に照らして、拡張申立てされた99万円超過部分の財産が破産者の経済的再生に必要不可欠であるという特段の事情が認められる場合には、例外的に自由財産拡張相当とする(不可欠性の要件)。

家計簿について

自己破産や民事再生の手続きを行う際には、裁判所に申立てをする直近2ヶ月分の家計簿を提出しなければいません。この家計簿には債務者だけでなく、同居しているすべての人も含めた「世帯の家計」を記載しなければいけません。家計簿の提出を受けることで、裁判官が債務者を含めた世帯の生活状況などを把握することができるほか、次のような意味があると考えられます。

勘定科目の振り分けは当事務所で行います

大まかな家計簿では裁判所に信頼してもらえないことがあるため、勘定科目の振り分けなど、できるだけ細かくつける必要があります。しかし、経理や総務などのお仕事をされていた方以外は、勘定科目を適切に振り分けるのは難しいと思いますので、ご依頼者様に毎日、購入した食品や嗜好品などをご記入頂いた後、当事務所で適切な勘定科目に振り分けるようにしています。勘定科目の振り分け以外にも、何かわからないことがあればご自身で判断するのではなく、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

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