離婚

離婚の種類

離婚の種類として主に「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つがあり、通常、夫婦の関係性や協議の状況などに応じて段階的に選択していくことになります。

協議離婚

夫婦の話し合いにより成立する離婚です。「離婚届」に必要事項を記載して署名捺印した後、市町村役場に提出すれば離婚成立となります。日本の離婚の約90%は協議離婚であると言われています。

調停離婚

家庭裁判所において、2名の調停員と1名の裁判官(但し通常裁判官は同席しません)から構成される調停委員会が夫婦の間に入り、離婚の成立のほか、子どもの親権や養育費などについて意見調整して合意を目指す手続きです。 また、事案によっては、調停の席に家庭裁判所の調査官が同席することもあります。

◆離婚調停について
離婚調停は家庭裁判所の本庁・支部・出張所などで、通常、平日の昼間に行われます。 申立人、相手方、それぞれ別の待合室に待機して、調停室には別々に呼ばれるので、相手と顔を合わせずに調停手続を進めていくことが可能です。 調停離婚は本人でも行うことができますが、弁護士を代理人に立てることもできます。 代理人には弁護士しかなることができず、ご家族などを代理人することはできません。 大阪家庭裁判所においては、申立人・相手方を含めて全体の約半数の方が弁護士を代理人として立てていると言われており、お仕事などがあって平日の昼間の調停に出席するのが難しいという理由から、弁護士を代理人に立てている方もいます。 なお、代理人のみの出席も可能ですが、その際には調停委員を通じて相手方の質問を聞いた時に、一度持ち帰って検討しなければいけなくなるため、通常よりも調停が長引く傾向になります。 離婚調停は基本的に1年以上かかることはなく、1年かけても合意がなされない場合には、調停としては打ち切りとなります。 この場合には、いずれかの当事者から改めて離婚訴訟を提起することになります。 離婚調停手続が約半数の方が本人で調停手続を執るのに対して、離婚訴訟の場合には、現在の制度の下ではご本人が離婚訴訟を行うことはなかなか困難であるため、離婚訴訟ではほとんどの方が弁護士を代理人に立てています。

◆離婚調停の管轄
離婚調停で不便なのは管轄の問題です。 当事者双方のいずれの住所地でも認められる離婚訴訟とは異なり、離婚調停は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所と決められています。 その為、相手方が遠方にある相手方の実家に帰ったりすると、遠方の家庭裁判所に調停を申し立てる必要があるのです。 これについては、電話会議システムにより調停を進めてくれる裁判所もありますが、裁判所の地域性によって取り扱いは一様ではないようです。

裁判離婚

裁判離婚とは、調停離婚が不成立となった場合に、家庭裁判所に訴訟を提起して、判決によって離婚を成立させる手続きです。 双方が同意しなくても、判決により強制的に離婚を成立させることが可能です。 ただし、裁判離婚を成立させるためには、 「配偶者の不貞行為」 「配偶者による悪意の遺棄」 「配偶者の生死が3年間以上不明」 「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない」 「その他婚姻関係の継続が困難な重大な事由がある」 などの民法が定める離婚理由が必要となります。 近年は、3~5年間の別居期間の経過も、婚姻を継続することのできない重大な事由のひとつとして離婚原因に認められるようになりました。

離婚調停について

離婚調停は家庭裁判所の本庁・支部・出張所などで、通常、平日の昼間に行われます。申立人、相手方、それぞれ別の待合室に待機して、調停室には1人ずつ呼ばれるので、相手と顔を合わせずに出席することも可能です。調停離婚はご本人でも行うことができますが、弁護士を代理人に立てることもできます。代理人には弁護士しかなることができず、ご家族などを代理人することはできません。大阪家庭裁判所においては、申立人・相手方を含めて全体の約半数の方が弁護士を代理人として立てていると言われており、お仕事などがあって平日の昼間の調停に出席するのが難しいという理由から、弁護士を代理人に立てている方もいます。なお、代理人のみの出席も可能ですが、その際には調停委員を通じて相手方の質問を聞いた時に、一度持ち帰って検討しなければいけなくなるため、通常よりも調停が長引く傾向になります。ただし、離婚調停は基本的に1年以上かかることはなく、1年かけても合意がなされない場合には、訴訟に移行される傾向にあります。

離婚慰謝料について

離婚慰謝料は当然に請求することが出来るものではなく、相手方に離婚の原因となった責任事由がある場合に請求することができます。 離婚調停で慰謝料が認められるのは、浮気や暴力という明確な離婚原因がある場合が多く、はっきりした離婚原因がない場合には、離婚調停では慰謝料は認められないことも多くあります。 慰謝料を請求する場合、相手も「慰謝料」という言葉に対して感情的になり、支払いを認めたがらないこともありますので、「解決金」という言葉を使って、金銭の支払について意見調整することもあります。 具体的な離婚慰謝料の金額については、丸い数字になることが多く、通常は200万円~300万円程度です。

財産分与について

調停離婚において財産分与が争点となっている場合には、調停委員が弁護士を代理人に立てることをすすめてくることがあります。財産分与の対象となるのは、これまで夫婦間で形成してきた「実質的財産」のみで、結婚前の預貯金、株、不動産のほか、結婚の前後にかかわらず親などから贈与されたり相続したりした「特有財産」は対象となりませんので、これらを区別しなければいけません。また、通常、財産は常に上下変動するため、双方の財産を持ち寄って2つに分ける場合でも、どの時点の財産を基準とするかという問題が持ち上がったりするなど、複雑な計算や処理が必要となります。こうしたことに調停委員やご本人だけで対応するのは難しいため、財産分与が争点となる場合、特に熟年離婚の場合には、弁護士を代理人に立てる傾向にあります。

本人調停で離婚調停を進めている場合に、財産分与が争点となっていると、調停委員が弁護士を代理人に立てることをすすめてくることがあります。 財産分与の対象となるのは、これまで夫婦間で形成してきた「実質的財産」のみで、結婚前の預貯金、株、不動産のほか、結婚の前後にかかわらず親などから贈与されたり相続したりした「特有財産」は対象となりませんので、これらを区別しなければいけません。 また、通常、個人の財産は常に変動するため、双方の財産を持ち寄って2つに分ける場合でも、どの時点の財産を基準とするかという問題があり、複雑な計算や処理が必要となります。 こうしたことに調停委員や本人だけで対応するのは難しいため、財産分与が争点となる場合、特に熟年離婚の場合には、弁護士を代理人に立てる傾向にあります。 財産分与(清算的財産分与)は、夫婦の経済的協力関係により形成した実質的共有財産を、その寄与度に応じて清算する手続です。 財産分与(清算的財産分与)について判断する為には、分与対象財産を確定する基準時を確定した上で、双方に基準時における財産を開示させて、特有財産や評価額など争いのある財産を整理し、寄与度に応じて具体的金額を算定するという作業をすることになります。

財産分与の基準時

財産分与の対象となる財産については、どの時点の財産を基準とするかという問題があります。 これについては、分与対象財産は、夫婦の経済的協力関係が終了するまでに形成された財産であることから、原則として別居時の財産を基準にするものとして実務上運用されています。

特有財産について

夫婦の財産は夫婦共有財産と推定されます。(民法762条2項) それ故、特有財産であるかどうの争いがある場合には、特有財産であることを主張する側がそれを証明する必要があります。証明が出来ない財産については、夫婦共有財産であるものとして財産分与の対象財産となるのです。

子どもの預貯金については、子どもがアルバイト代を貯めたような場合には子ども固有の資産といえますが、親が子どもの将来の為に子ども名義で行っていた預貯金は、夫婦共有財産として、実際に管理している親の名義の財産として取り扱われます。いずれにあたるのかについては、子どもの年齢や入出金状況によって判断されることになります。

財産の評価

財産分与の対象となる財産は、別居時における夫婦の財産ですが、その評価は実際に財産を分ける際の評価によります。 例えば、株式等の金融資産や不動産の評価額は、別居時ではなく、実際に財産を分ける際の評価によることになります。 株式については、上場株式の場合、実際に財産を分ける際の時価あるいは売却していれば売却時の金額、非上場株式の場合は、決算書の貸借対照表の純資産額を総発行株式数で除して決めることになります。

退職金、確定拠出年金の取扱い

退職金については、実務上も様々な考え方がありましたが、現在は退職までの年数にかかわらず、基準時において自己都合退職した場合の退職金支給額を財産分与の対象金額とする考え方で定着しています。 但し、婚姻前の期間に該当する退職金については他方配偶者の貢献はありませんから、その部分の退職金は財産分与の対象財産とはなりません。退職金のうち財産分与対象額を計算する為には支給額を在職期間で割って、同居期間を掛ける必要があります。 確定拠出年金についても、基準時における拠出金の総額が財産分与の対象財産となります。 これについても、婚姻前の期間に該当する拠出金が分与対象財産ではないことは退職金と同様です。

債務の取扱い

債務についてはマイナス財産として計算します。住宅ローンも同様です。 ただ、債務は夫婦の共同生活の為に必要なものに限られます。 婚姻前からの借金、個人的な遊興費の為の借金は財産分与の計算には入りません。

分与割合

財産分与の割合については基本的には2分の1であると考えられています。 しかし、高額所得者については必ずしも2分の1ではなく、6対4や7対3という割合の判決がなされることもあります。

未払婚姻費用の清算

未払婚姻費用については、過去の婚姻費用の分担の態様も財産分与において考慮するべき一切の事情と考えられているので、未払婚姻費用についても一応は財産分与において考慮されるべき事由のひとつです。但し、未払があることを考慮するかどうか、考慮するとしてどの程度考慮するのかについては個別具体的に判断されることになります。

年金分割について

年金分割の割合については、インターネット上などで「50%(0.5)以外で割合を定める例もある」と記載されていることもありますが、これは実務上の運用としては正しくありません。 家庭裁判所は年金分割の按分割合については50%(0.5)で運用されています。 年金分割については、その定めを調停調書(審判書、判決書を含む)か、公正証書にしなければならない決まりになっています。ですから、年金分割の為には、裁判所の調停手続を経るか、公証人役場に出向いて公正証書を作成して頂く必要があります。 まず、年金事務所で年金分割の為の情報通知書と題する書面の交付を受けてください。この書面の交付には、以前は随分の期間を待たされましたが、今は皆さん比較的短期間に情報通知書の交付を受けておられます。 この情報通知書の原本を家庭裁判所ないし公証人役場に提出します。 そして、調停が成立したり、公正証書が作成されたら、再び年金事務所に調停調書ないし公正証書を提出してください。 これにより、年金分割の手続が完了することになります。 尚、年金分割は2008年4月1日以降に結婚された夫婦については自動的に分割となりますので年金分割の手続をする必要はありません。

親権について

15歳未満の未成熟子の場合には、実務上、父親が親権を取るのは非常に難しいと言えます。 裁判所は、基本的に子どもには母性が必要だという考え方に立っているからです。 父親が親権を取れるケースは、母親が不貞行為をはたらき子どもを放って家を出た場合や、育児放棄や幼児虐待をしている場合などに限られており、こうしたケースを除いては、父親が親権を取るのは難しいというのが現状です。 反対に、母親が親権を取りたい場合には、前述したようなケースでない限りは、高い確率で親権を取ることが可能です。 15歳以上の未成年者については、子どもの意見を聞いて、基本的に子どもの意見に沿って親権者が定められます。近時は実務上は15歳になっていなくとも、それに近い年齢であれば子どもの意思を確認する傾向にあります。 離婚に際して有責である配偶者は親権者としても不適当であるとする見解もありますが、親権者の指定は子の福祉を考慮して考えられるべきであり、離婚に際しても有責性の問題とは切り離して考えるのが実務の基本的な考え方です。

面会交流について

子どもとの面会交流が争点となっている場合には、現在、履行を確保する充分な制度がないことなどから、調停や審判の期間は一般的に長くなる傾向にあります。 当事務所では、子どもとの面会交流を求められている方からのご依頼も承っておりますので、お困りであればお気軽にご相談ください。 なお、面会交流について、親権者が「面会させたくない」と思っていても、家庭裁判所は「原則、認められるべき」と考えていますので、月1回程度の面会が認められるのが通常です。 面会交流についてよく質問を受けるのは、養育費と交換条件にできないかというご相談です。 しかし、面会交流と養育費の支払いは別の次元の問題とされていますので、面会交流と養育費を交換条件にすることは認められていません。それを合意したとしても、その効力は無効であると考えられています。

養育費・婚姻費用などについて

お子様の養育費や婚姻費用などは算定表によって定められており、それにもとづいて決められます。養育費の場合、双方の前年度の源泉徴収の総額(税込)や、お子様の年齢などで算出される金額の範囲は決まっていますので、状況によってはご本人でも請求することが可能です。ただし、双方または一方が再婚してお子様の数が変わったりすると、算定表にもとづいた計算だけでは対応できない場合もありますので、そうした場合には弁護士のサポートを受けられることをおすすめします。

算定表に基づく算定

お子様の養育費や婚姻費用などは算定表によって定められており、それにもとづいて決められます。養育費の場合、双方の前年度の源泉徴収の総額(税込)や、お子様の年齢や人数で算出される金額の範囲は決まっていますので、状況によってはご本人でも請求することが可能です。 ただし、双方または一方が再婚してお子様の数が変わったりすると、算定表にもとづいた計算だけでは対応できず、指数に基づく計算が必要となりますので、そうした場合には弁護士のサポートを受けられることをおすすめします。

算定表にない事案における養育費や婚姻費用の計算

算定表は、扶養義務者の年収が2000万円以上であったり、扶養義務者の他にも扶養義務を負うべき家族が存在したりする場合には適用することができません。 そのような算定表にない事案における養育費や婚姻費用は、算定表のもとになっている指数計算を個別に計算することになります。

養育費の新算定表(最高裁)について

令和元年12月23日、最高裁判所が、これまでの算定表に代わる新しい算定表を発表しました。以後、養育費、婚姻費用の算出は、この新算定表を使用することになりました。

別居について

近年までは、長期間の別居だけでは離婚原因として認められないことが多かったのですが、最近では、一定期間別居が続けば離婚が認められる傾向にあります。 通常の場合で3年間程度の別居期間で離婚が認められる傾向にあり、有責配偶者(浮気など、離婚原因を作った側)の離婚請求の場合でも、5年間程度の別居期間で離婚が認められる傾向にあります。 ただし、有責配偶者の離婚請求が認められるには、 「別居期間が相当期間に達している」 「未成年の養育すべき子がいない」 「離婚される配偶者が離婚により精神的、社会的、経済的に過酷な状況にならない」 という最高裁判所の示した3条件を満たす必要があります。 こうして一定期間の別居が離婚原因として認められやすくなった結果、別居ないし別居期間そのものが争点となるケースが増えています。 別居していても、新たに賃借物件を借りずに異性宅に転がり込んだり、住民票を移していなかったり、引っ越し業者を利用せずに自分で身のまわりの物だけを持ち出して別居していたりすると、相手方が別居していないと主張したり、一定の期間が別居期間として認められないことも出てきています。 それ故、一定の別居期間を経て離婚をしたいとお考えの方は、別居したことが後日はっきりと分かるように、新たに賃借物件を借りたり、住民票を異動したり、引っ越し業者を利用して転居し契約書や領収書を残しておいたり、郵便物の転送届けを出すなど、別居を示す外形的事実を明確に作っておくことをおすすめしています。

弁護士に離婚問題を依頼するメリット

離婚したくないとお考えの方には、できる限りご本人で調停を進めていく方が良いと思います。 弁護士が介入することで、かえって相手方の態度を硬化させてしまうことがあるからです。 一方で、離婚したいとお考えの方には、積極的に弁護士に問題解決を依頼されることをおすすめします。 弁護士が介入することで、相手方に本人が本気で離婚を望んでいることが伝わるなど、様々な心理的効果を期待することができるからです。 その結果、相手方が協議離婚や調停離婚などに応じるようになることもあります。

弁護士費用が不安な方へ

弁護士費用が不安な方は、「法テラス」を利用されることをおすすめします。 法テラスとは国が設立した司法援助機関で、経済的に困窮している方に対して、無料の法律相談や弁護士費用の立て替えなどの支援を行います。 こちらを利用すれば、費用を心配することなく、離婚問題を弁護士に依頼することが可能となります。

死後離婚について

死後離婚とは、実際には配偶者の死後に離婚はできないのですが、配偶者の死後に姻族関係終了届(民法728条2項、戸籍法96条)を提出することによって、亡くなった配偶者の親族との親族関係を一方的に切ることをいいます。 死後離婚という言葉は法律用語ではなく、姻族関係終了届の制度が制定された後、マスコミが造った造語です。 配偶者が亡くなった場合、死別なので離婚と違って姻族との関係はそのまま継続されます。そのため、どうしても縁を切りたい事情がある人は姻族関係終了届を提出する必要があります。 姻族関係終了届を提出すると、亡くなった配偶者の親族との親族関係がなくなります。 親族の介護や扶養の義務からは解放されることになります。他方、相続の権利はなくなりません。 それ故、平成16年の民法改正以来、次第に届け出数が増えていると言われています。 この届出と同時に婚姻前の氏に復する届出(復氏届)の提出も認められています。(民法751条) 婚姻前の氏に復する為には、姻族関係終了届だけではなく、復氏届を提出する必要があります。

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